年末年始にソウルに行っているときに買いました。すでに何度も聴いています。Memory LaneやWith Refractoryは、私にとってはやや異色なアルバムでしたので、それより前のアルバムの系列上にあると感じましたが、歌は著しく前進しています。
例えば、"Down by Love"と聴き比べると、この間の年月がしっかり歌に積もっている感じ。"Down by Love"が駆け出しの歌手の歌に聴こえるくらい、"Voyage"からは時間の重さがひしひし伝わってきます。 音数が少ないので、スケールが小さいと感じてしまうかもしれません。しかし、ナ・ユンソンさんの歌を生で聴くと、とてつもない迫力です。小さい声でささやくように歌うところから、爆発的な声量でロングトーンを聴かせるところまで、広い広い広い幅を、縦横無尽に行ったり来たりしながら、楽器の演奏者がうらやむくらいに自由な表現をしてしまいます。つまり、このアルバムでは、抑え気味の歌い方を強調しているだけです。 表現の仕方は、全体的に必ずしもシンプルではないので、ジャズ・ボーカルの王道を求めているかたには、合わないかもしれません。王道なジャズ・ボーカルのように、すっと伸びる直線や、素直にはね上がった曲線など、シンプルな要素だけで曲を構成してはいません。 細い筆から太い筆まで、瞬時にあれこれ持ち替えながら、筆の毛の一本一本を別々に使うかのように、複雑な曲線を、ときには薄く、ときには濃く描いている、と思えば、これはこれでひとつのボーカル・スタイルだと思います。また、もはや誰も追随できないところまで行って、独自な境地を切り開いているとも思います。 ナ・ユンソンさんの歌を日本で聴くことは、ほぼ不可能に近いでしょう。運良く一度でも聴けた私は幸せだったと思います。このボーカルを聴いた上で、同じ会場で別のジャズ・ボーカルを聴けるかどうかは疑問と思えるくらい、印象に残りすぎています。 この歌の雰囲気に近いものは、日本の歌手で言えば、KOKIAさん以外では感じたことがありません。歌と、ほんのわずかな楽器だけで、一時間を超える時間、お客を自分の歌に釘付けにできる歌手は、めったにいません。 あの・・・ナ・ユンソンさんを、もっと日本に呼んだらどうでしょうか。特に女性にお勧めします。ジャズ・ボーカルと言えば、だいたいちょっと年が上の男性しか聴きに行かないものですが、このボーカルは普遍的です。女性が聴きに行っても、いかんともしがたく心を揺さぶられてしまうと思います。 日本でなかなか聴けないのがもったいない。こんな良い歌は、やっぱり生で聴かないと。一生に一度くらいは。 http://www.yesasia.com/us/%E3%83%8A-%E3%83%A6%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3-voyage/1011948299-0-0-0-ja/info.html 追記 : このアルバム、今は韓国盤のみの発売ですが、4月にはACTというレーベルから英語版が発売されるようです。
by tmasada2
| 2009-01-20 23:11
| JAZZ日記
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